絶対に好きじゃナイ!
【目撃情報集・編集後記】
○月△日
この日は本当に散々だった。
あれは断じてアクシデントだけど、社長の腕に力強く抱きしめられたり。
受話器を握った手に社長の手が重なって、あり得ないほど至近距離に社長のお顔が近付いたり。
耳元で流暢な英語を聞いて、何を言ってるのかは全然わからなかったけど、わたしの心臓は暴れ放題だった。
だけど実はこの日の闘争には、誰も知らない続きがあってーー
就業時間を過ぎてすぐ、わたしはほてる頬を冷ましに給湯室にとびこんだ。
「あー、もう。違う違う違う! これは別に好きとかじゃなくて、ただびっくりして心臓がどきどきして……、そう、動揺! これはただの動揺であって、だから……」
勝手に暴れる心臓を落ち着けるために、壁に両手をついて呪文のようにぶつぶつと呟いた。