絶対に好きじゃナイ!

「なにをひとりでしゃべってんだ?」

「しゃ、社長……!」


突然後ろから聞こえてきた声に、わたしは勢いよく振り返った。


怪訝な顔をして給湯室に入ってきた社長の手にはマグカップ。

あのカップを戻しに来ただけだってわかってるのに、わたしの心臓は条件反射みたいに跳ね上がる。



む、ムリムリムリ!
もう今日はムリなの!!


失礼なのは百も承知でバッと視線を逸らすと、わたしはもう一度社長に背中を向けて壁と向き合った。


「……なにやってんだ?」

「なんでもないですから、どうぞお気になさらず」

「いや、気になるだろ」

「い、いいんです、いいんです。わたしのことは放っておいてください」

「こっち向けよ」

「いえいえいえ! いいんですよ、全然、全然気にしてくださらなくて!」


社長が黙り込んで、静かになる給湯室。

数日前、ここで社長と2度目のキスをしてしまったことなんて思い出して、わたしの身体は全身が心臓になったみたいに脈を打つ。
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