絶対に好きじゃナイ!
落ち着け落ち着けって、目を閉じて頭の中で念仏みたいに唱えてた。
そうしていたら、ふと鼻先に覚えのある香りが漂ってきたの。
ここ最近覚えてしまった、めまいのするような社長の微かに甘い香り。
驚いて目を見開いたとき、社長が少しゴツゴツした手を壁につくのを見た。
わたしの背後から、身体の両脇にわたしを囲うように置かれた両手。
そのせいでわたしの心臓は落ち着くどころか更に激しく暴れはじめる。
「こっち向けよ」
「い、いやです!」
「なんで?」
「なんでもです! 社長こそ離れてください、セクハラだって言ってるじゃないですか!」
「あ?」
わたしは全力で身体を小さくして壁に張り付いた。
だって、少しでも動いたら社長の胸に背中が触れてしまいそう。
あそこに抱きとめられたことを思い出すと、今でも恥ずかしくて息が止まりそうになる。
ああ、もう!
今日は敵に背後をとられすぎてるんだ!