絶対に好きじゃナイ!
「梨子、こっち向けって」
就業時間を過ぎてるからなのか、給湯室だからなのか。
とにかく反則的にわたしの名前を呼んだ社長の低い声が耳元でこだまして、自分の肩がぴくんっとはねたのがわかる。
社長が微かに笑ったような気配がして、ピンと張ってわたしを囲っていた両腕の肘を折りたたんだ。
「き、きゃっ!」
社長の身体がわたしを柔らかく壁に押し付ける。
「は、はは、破廉恥! なにしてるんですか! 離れてください!」
「ああ、わかってる」
そんなこと言いながら、背中にぴったりと感じる社長の身体は全然離れる気配もない。
梨子がこっち向かないのが悪い、って。
なぜだか楽しそうな社長の声が頭の上から優しく降ってくる。
「仕方ないから、今日はコレだけ」
ここが会社だってことを忘れちゃうような、社長の低くて甘い声。
その声が鼓膜を震わせたとき、ちゅっと可愛い音と一緒に社長の柔らかい唇がわたしの頬にキスをおとした。