絶対に好きじゃナイ!
「じゃあな、気をつけて帰れよ」
そんな可愛いキスひとつでわたしを黙らせて満足したのか、あっさりと離れた社長が給湯室を出て行く。
社長がいなくなって、しーんと静まる給湯室の中。
それでもわたしは振り向けなくて、壁と向かい合ったままへなへなとその場に座り込んでしまった。
「も、もう、心臓がもたないよ……」
ほかほかと熱くなる顔を両手で覆って、わたしはこの日少しだけ弱音を吐いた。
もうあの人には敵わないかもしれないって、このとき少しだけ感じていたことは、悔しいから絶対教えてあげないけど。
これはわたしと社長の恋愛闘争が一時休戦を迎える、少し前。
○月△日の、ある激戦日の出来事。
period5:○月△日の激戦
(あれは、俺を1日中ヤキモキさせた仕返しだからな)