絶対に好きじゃナイ!
そして極めつけに、
「電話中だったからな。手の届くとこにいてくれたほうが安心だ」
なんて言うから、わたしは心の中で全力で白旗を振るしかなかった。
「あれ、もしかして西城くん?」
わたしが密かに社長に撃墜された日のことを思い出していたら、ふと後ろから社長を呼ぶ声が聞こえた。
その声につられて後ろを振り返る。
そこにいたのは、隙のないお化粧をして長い髪を綺麗な明るい色に染めた女の人だった。
社長の顔を見て、長いまつ毛に囲まれた瞳をパッと輝かせる。
「やっぱり! ひさしぶりね!」
「……沙織か?」
少し考えてから器用に片方の眉をあげて言った社長に、沙織さんっていう女の人が嬉しそうに頷く。
なんの知り合いなんだろう……?
わたしはなんとなく身の置き場がない気がして、隣に立つ社長の顔を見上げた。