絶対に好きじゃナイ!

そして沙織さんがハッとして思い出したように言った。


「あ、もしかしてこの子のこと? ずっとお預け食らってる年下の女の子って」

「お預けって言うな。待ってただけだ」

「なぁーんだ」


くすくすと笑った沙織さんが、わたしのほうを見てにっこりする。


「ごめんなさいね、あなたが噂の西城くんの待ち人だったのね。彼の"弱点"に敵わないのはわかってるから、心配しないで」


そしてあっさりと手を振ってわたしたちの前を通り過ぎて行った。



ぽかーんとしてわたしが見上げると、社長はなんだか決まりの悪そうな顔をして髪をくしゃくしゃと乱した。


「む、昔の知り合いだ。怒ってもいいけど、頼むから泣くなよ」



昔の知り合いって……

会話から察するに、たぶんそういうお付き合いのあった人だよね?

ぼけーっとしたまま手を引かれるわたしを、社長がときどき心配そうに見下ろすのがわかる。


社長がいろんな女の人を相手にしてきたのは知ってる。
そんなの、小学生の頃はなんとも思ってなかったんだし。

だけど実際に相手の女の人に会ってしまったのははじめてだったから、なんかびっくりしちゃった……
< 196 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop