絶対に好きじゃナイ!

キスをするとき、こんなに顔が近いものだなんて知らなかった。
要さんの切れ長の目が、眼鏡の奥でらんらんと光っている。

これ、眼鏡が当たって邪魔になったりしないのかな。


じゃ、じゃなくて!

なんでこんなに距離が近いんだろうって思って、そう言えばさっき自分で詰め寄ったんだって思い当たった。

バカ!わたしのバカ!
この人には簡単に近付いちゃダメだってわかってたはずなのに!


わたしがひとりで慌てている間にも、要さんの中性的な顔がどんどん近付いて来る。


「かっ、かかか要さん……!」


ああ、もうダメ。
どうしよう。

これがわたしのファースト・キスなの?


暴れようとか抵抗しようとか、そのときは全然思い付かなかった。

ただひたすら、要さんの眼鏡のレンズが近付いてくるのを呆然と見上げていたわたし。


ああ、目を閉じるタイミングも知らないのに。

相手を選ぶ暇すらなく、もうすぐその唇が触れてしまう……
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