絶対に好きじゃナイ!
ベッドの上で社長が囁く数々の恥ずかしい言葉を思い出して、ひとりでばたばたと悶えていた。
あんなの、会社にいる社長からは絶対に想像もつかないんだから。
あれがうちの不良社長と同一人物だなんて、松丸くんが聞いたらきっと信じないと思う。
とりあえず何か着ようと思ってふと顔を上げたとき。
いつの間にか寝室のドアのところに寄りかかるようにして立っていた社長と目があった。
「……虎鉄?」
自分だけちゃっかり部屋着を着た社長が、なんだか優しい目をしてじっとこっちを見つめている。
わたしがそわそわと白いシーツを手繰り寄せて肌を隠すと、社長がゆっくりとベッドに近付いてきた。
「梨子に渡したいものがある」
そう言って社長がベッドに腰をかけると、小さくスプリングが軋む音がする。
「わたしに……?」
なんだろ?
誕生日はまだまだ先だし、社長から受け取るものなんて何かあったかな?
社長が首を傾げるわたしの右手をとって、その手のひらの中にそっとそれを押し込んだ。
見ていいの?って、わたしが目で伺うと、社長が優しく頷く。
恐る恐る開いた右手にのせられていたのは、見覚えのある銀色の鍵だった。