絶対に好きじゃナイ!

「ここの合鍵だ」


ぱちりと目を見開いたわたしに、社長がそう言う。


「わ、わたしがもらっていいの?」

「ああ」

「ほ、ほんとに……?」


だって、お部屋の鍵だよ?

いくら大抵の週末はここにお邪魔してるからって、合鍵なんて、簡単に渡していいものじゃないでしょ?


ぽかーんと見上げるわたしに、社長がなんだか困ったように笑う。

そして両腕を伸ばしてわたしの腰を引き寄せると、自分の隣に座らせてこつんとおでこを合わせて言った。


「ときどき、ここで俺の帰りを待って欲しい。梨子がいるこの部屋が、いちばん落ち着く場所だから」


そしてするりとベッドをおりて、わたしの前に跪く。



「その代わり、条件がある」


わたしをまっすぐ見上げた社長が、少しよれた白いシーツをわたしの身体にしっかりと巻きつけ直した。

白い衣装を身に纏うわたしの左手をそっと包み込んで、持ち上げる。


わたしの心臓はどきどきと音を立てて、社長の仕草をひとつも逃さないように瞬きも忘れて見つめていた。
< 204 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop