絶対に好きじゃナイ!
眼鏡のフレームが、微かに頬をなでた。
唇が触れそうになって、吐息のかかる距離で要さんがおもしろそうに呟く。
「……やっと来たか」
「んんっ!?」
要さんの言葉を疑問に思う隙すらなく、少しゴツゴツとしたものが口元を覆った。
な、なに!?
なにが起こってるの!?
あれだ、テレビでよくある誘拐されちゃうシーンみたいな。
そのくらいの勢いで、わたしと要さんの間にあったわずかな隙間に割り込んできて、後ろからわたしの口元を塞いだ手。
そしてそのままグイッと顎を持ち上げられて、強く腰を引き寄せられる。
くるっと簡単に向きを変えた身体。
片手でぎゅっと抱きしめられただけで、かかとが上がる。
首が痛くなるほど真上を見上げた先から、落とされるように降ってきた。
唇に触れた、少し冷たいもの。
だけど柔らかくて、なんだか、ずっとこうしていられたらいいのに……