絶対に好きじゃナイ!

驚きのあまり、限界まで見開かれたわたしの目に映るもの。
それは、近すぎて輪郭のはっきりしない、ボヤけた社長の顔だった。


しゃ、ちょう……?

社長!? なんで!?
待って、これってまさか……


「んんっ!」


閉じられた唇をこじ開けようとする、熱いもの。

奥深くまでねじ込まれたそれが、これがキスなんだってわたしに教える。


ぎゅっと抱きしめられたまま、ものすごいキスをお見舞いされた。
いや、キスの基準なんて知らないけど、とにかくわたしはふらふらだった。


息も絶え絶えなわたしをようやく解放すると、力の抜けたわたしの身体をそのまま腕の中に囲って優しく抱き留める。


「お前、あんまふざけたことすんなよ」


頭の上で響いた低く魅力的なその声は、まぎれもなく社長のものだった。


要さんとキスしそうになっていたわたしを、後ろから攫って助けるどころかもっと強烈なキスをかましてくれた人。

それはどうやら、うちの社長で間違いないらしい。
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