絶対に好きじゃナイ!
「久しぶりだな、虎鉄。少し老けたか?」
さっきまでわたしにキスをしようとしていたくせに、呑気な声でそんなことを言った要さん。
社長も社長で、「そうか?」なんて言いながら自分の顎をなでている。
だけど片腕はわたしをしっかりとその胸に抱いたまま。
「お前な、あんまりこいつをからかうな。ファースト・キスを済ませたいらしいから俺がもらっとくなんて……」
「いや、からかったのは梨子ちゃんじゃなくて虎鉄なんだけど」
「あ?」
わたしの頭の上で交わされる会話から察するに、どうやら要さんがさっき電話をかけていた相手は社長だったみたい。
それじゃあ社長は、要さんがわたしにキスするって話を聞いてここまで来てくれたってこと……?
そこまで考えて、わたしの胸の奥がきゅんっと小さな音をたてた気がした。
でも待って。
それって、社長がわたしにキスする理由にはなってなくない!?
「しゃ、社長! そろそろ離して欲しいんですけど……」
わたしがおずおずと声を上げると、社長の鋭い視線がぎろりとわたしを見下ろした。