絶対に好きじゃナイ!

「もう合コンなんて行かなくていい。俺が我慢ならん」


あーあ、もう……
こんなに怖い顔して、どの口がそんな台詞を吐くんだろう。

だけど知ってるんだ。

この人、いつもしかめっ面で優しいことを言うの。

小学生のわたしが社長たちのケンカに着いて行って怒られたときも、そう。
怒った顔をして大きな声を出した社長は怖かったけど、いつもイヤというほどこの人を見てたからわかったの。

真剣に、本気で心配してくれてるんだって。


「でも、だって……」


だけど意地っ張りなわたしは素直に頷けない。

だって、わたしだって恋愛がしてみたいの。
小説を読んだり、話に聞いたり。
憧れるだけじゃない、本当の恋を。

キスだって、その先だって。
どきどきすること、全部知りたいのに。


「心配すんな」


俯いたわたしの頭を、社長が少し乱暴にぐりぐりとなでる。

なんだか懐かしい。

社長にこうされると、小学生のわたしに戻ってしまったみたい。
< 25 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop