絶対に好きじゃナイ!

「ははは、梨子ちゃん真っ赤になって可愛いなあ」


完全にフリーズして何も言えなくなったわたしを見て要さんが笑う声がする。

だって、はじめてをもらっていくって……


それって、それって!


「おい、しっかりしろよ。ほんとに何も知らねえんだな。無防備なくせして、俺がいない間よく無事だったもんだ」


頭の中がぐるぐるする。

いつから?
一体いつから、社長はこんなふうになっちゃったの?


上司と部下の間でしっかり線引きされていたその境目を。

社長はこの日をきっかけに突然飛び越えて来た。


わたしをかき乱す薄茶色のまっすぐな瞳。
だけど意地っ張りなわたしが言ってるの。

この人は、ダメ。
絶対好きになんてならないって、ずっと前に決めた人じゃない。


この人のことは、絶対、絶対に好きじゃナイ!



こうしてこの日を境に、わたしと社長の恋愛闘争は激化の一途を辿ることになる。
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