絶対に好きじゃナイ!

「そ、それは、社長がそうやってわたしのことを振り回すからで……!」

「それじゃあ俺が、責任もって落ち着かせてやらないと」


わたしの顔の横についた、少しゴツゴツした社長の手。

もう片方の手がそっとわたしの頬に触れると、そのまま包み込んで顔を上向かせる。


「梨子は俺が気になって、仕事に身が入らないんだろ?」

「は、はあ!? 何言ってんですか、あなたのことなんて、全然気にしてません!」

「そう? そのわりに、こうしてるだけで身体はふにゃふにゃだけど。そろそろ認めたら?」


そう言った唇がどんどん迫ってきて、しまいには端正な社長の顔が近すぎてボヤけてしまった。

ああもう、ヤバい。
違うの、こんなはずじゃない。

だってわたし、社長のことなんて……



「あ、あなたのことなんて、絶対、絶対に好きじゃナイ!!!」



わたしのその叫びは、楽しそうに弧を描いた社長の唇に触れて、のみこまれた。


意地っ張りなわたしをどろどろに溶かして、そして心までふにゃふにゃにしようとしてくる。

社長との、そして人生2回目のキスを甘んじて受けるわたし。






これはわたしと社長の恋愛闘争における、ほんの1コマの出来事。

そもそもこの戦いが激化した原因は、3日前の合コンにあったのだ。
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