絶対に好きじゃナイ!
2.特別な存在に関する闘争の記録
「おはよう、椎名」
そう言ってエレベーターの扉を押さえてスマートにわたしを導く社長。
「……おはようございます」
あんなことがあってから、もう数日が経ったわけだけど。
社長は相変わらず、オフィスでの線引きはしっかりしている。
こっちのほうが拍子抜けするくらい。
だけど油断は禁物。
休憩時間には容赦なく攻撃を仕掛けてくるし、だいたいこの人は素でかっこいいんだからわたしはひと時も気が抜けないってわけ。
たとえば、今みたいに。
事務所のオフィスはビルの8階にある。
だからとくに朝はぎゅうぎゅう詰めで別の階に行く人と乗り合わせのエレベーター。
そんな中、自然とわたしを壁際に寄せると、自分の腕と身体で囲ってしまった。
まるでわたしを守るようなその行動。
しかも、何食わぬ顔であたかも染み付いた習慣みたいにやってのけるから堪らない。