絶対に好きじゃナイ!
ふう、と詰めていた息を吐き出して自分のデスクに荷物を置く。
なんとか取り乱さずに済んだみたい。
悔しいけど、社長がかっこいいのは事実だから。
今日もあの人に思考を奪われることがないように、気合を入れて仕事しないと。
なんて、こんなこと考えてる時点でもう振り回されている自分は見て見ぬ振り。
そりゃ社長がモテるのもわかる。
でもそれとこれとは別問題なんだから。
あの人のことは絶対、好きにはならない。
「結木さん、おはようございます」
「うん、おはよう」
わたしの隣のデスクにいるのは、結木宗佑さん。
目の前が紫枝さんで、斜め前が松丸くんなんだけど。
結木さんは社長の大学の後輩なんだって。
26歳で今は設計部長を担当してる。
整った顔が一見冷たい印象で無愛想なんだけど、仕事はきっちりやるし実は優しくてちょっとおもしろい。
フロアにいる他の人にも軽く声をかけて、今日もこの小さなオフィスでの仕事がはじまった。