絶対に好きじゃナイ!
だけどあの頃のわたしは、それで全然いいって思ってたんだと思うの。
だって、あの西城虎鉄が"特別"って言ってくれたんだもん。
虎鉄の隣に現れては消えていく、他の女の人とは違うんだって。
わたしは、あんな風にはなりたくない。
ずっと虎鉄の"特別"なら、それでいいやって思ってたのにーー
それなのに!
突然わたしの目の前に現れて、自分の会社に誘ったかと思えば、挙げ句の果てにファースト・キスまで奪っていくなんて!
これで意識するなって言う方がムリなんだからね!
「椎名、これ」
「ひゃあ!」
び、びっくりした!
自分のデスクでもんもんと考えごとをしていたら、突然頭の上から社長の声が聞こえたから思わず変な声がでた。
わたしの肩越しに後ろから伸びてきた手が、机の上にドサリと資料を置いた。
「あ、これって……」