絶対に好きじゃナイ!
紫枝さんの住むお部屋には何度かお邪魔したことがある。
マンションの5階にある、一人暮らしには少し贅沢な広いお部屋。
窓から見える景色も綺麗で、今日はよく晴れて夜景もなかなか素敵だった。
「紫枝さん! おかわりください!」
「やだ、松丸くんってばほんとによく食べるのね。ちょっと待って、冷蔵庫にまだ材料があったと思うんだけど……」
わたしと紫枝さんで野菜を切って、みんなで鍋を囲んでお腹いっぱい食べた。
少しお酒も入って、松丸くんなんて真っ赤な顔をしてる。
わたしはもう満足だし、紫枝さんももう食べれないって言ってたんだけど……
「松丸くん、まだ食べるんですか? もう出汁もなくなってきてるけど……」
「あれ、ほんとだ。でも俺、全然腹いっぱいにならないんだけど。梨子ちゃんももっと食べないと、腕とか折れそうだよ」
「え、そんなことないですよ」
「ほんとだって! ほら、俺のと比べてみなよ」
そう言って松丸くんが自分の腕を出すから、わたしも袖をまくってふたりの間に肩を並べて腕を差し出す。
松丸くんの腕には程よく筋肉がついていて、さすがに一級建築士を目指すだけあるなあと思った。
「ほら、まじで細いって! 男の手なら簡単に握れちゃうけど」