絶対に好きじゃナイ!
「ごめーん、松丸くん! もう材料なくなっちゃったみたい」
キッチンで冷蔵庫をガサゴソとあさっていた紫枝さんが、顔を覗かせてそう言った。
「あ、じゃあわたし買い出し行ってきますよ。社長もまだ食べるんですよね?」
立ち上がって荷物の中からお財布を探し出す。
「ごめんね梨子ちゃん、お金はあとで渡すわね」
「椎名、俺、酒が欲しい」
「はーい」
結木さんってば、さっきからごはんもそこそこにビールばっかりだけど大丈夫なのかな?
まあ、それでも顔色ひとつ変えないところがさずかって感じだけど。
「あ、梨子ちゃん! 女の子ひとりじゃ危ないから俺が一緒に……ぐえ!」
「お前はそこで寝てろ」
起き上がりかけた松丸くんを社長がもう一度乱暴に引き倒す。
そして立ち上がってわたしの財布を取り上げると、また荷物の中に戻してしまった。
「食ってんのは松丸で飲んでんのは結木だろ。お前らが金つかう必要はねえよ」
そう言うと自分の財布をズボンのポケットにしまい込んだ。