絶対に好きじゃナイ!
社長はわたしの腕を掴んでいた手を滑らせて、そのまま左手をすっぽりと包み込んだ。
社長に手を引かれながら歩く。
「しゃ、社長……、あの……」
「お前と手ぇ繋いで歩いたことはなかったかもな」
戸惑うわたしを無視して、前を向いたままそう言った。
確かに、あの頃でも虎鉄と手を繋いだことってなかったかもしれない。
街に灯るあかりが、星のようにきらきらと光っている。
わたしたちが目指すいちばん近いコンビニまでは、少しだけ距離があった。
「……あの頃は手も繋がなかったのに。今は、き、キスまでできちゃうんですか」
「あ? 何を拗ねてんだ」
「だ、だって……!」
顔を上げると、わたしの手を引く先で、とても優しい顔をした社長がわたしを見下ろしていた。
ああ、違うかも。
これは社長じゃなくて、わたしの知ってる虎鉄の顔だ。