絶対に好きじゃナイ!
「梨子」
社長に名前を呼ばれると、魔法にかけられたみたいにわたしの身体は社長の思い通りになっちゃうの。
繋いだ手があたたかくて、わたしを見つめる薄茶色の瞳が熱く燃えている。
「もうお前になにをしても、まわりに文句を言われないくらいには大人になったつもりだ。だからお前を迎えに行った」
紫枝さん、結木さん、それから松丸くん。
ごめんなさい、少しだけ、戻るのが遅くなるかもしれない……
わたしの身体はもう、全身が心臓になっちゃったみたいにどくんどくんと脈を打つ。
「キスも、その先も。梨子の全部を、俺でいっぱいにしてやりたい」
いいか?ってわざと確認する、この人はほんとにズルい人。
甘い雰囲気の中、お互いに見つめあって。
それからこうして顔を近づけて、そしてそっと目を閉じる。
これじゃあ、まるでわたしの理想のキスみたいなんだもん。