絶対に好きじゃナイ!
「ははは! 有名人じゃないか虎鉄、小学校にまで知られてるぜ! 恥ずかしいやつだなー!」
「うるせー! お前もだろうが、笑うなアホ!」
けらけらと笑う要さんの声が、気持ちよく晴れた夏の空に吸い込まれていく。
「こてつ、今度の夏祭りりこも連れて行って!」
「夏祭り? あー、どうせあいつら暴れるからな……、梨子嬢は友だちと行ったほうが楽しいぞ?」
「ううん! りこ、こてつと行ったほうが楽しい!」
「でも、女の子はなあ……」
渋る社長に、わたしは一生懸命に食いついていたっけ。
夢を見ながら、あの頃の自分を思い出す。
夏祭りに行きたかったのは本当。
だけどきっと、いっぱいの人に見てもらいたかったんだと思う。
まだ小さかったけれど、虎鉄の隣を歩くひとりの女の子として。
わたしは虎鉄と仲良しなんだって、みんなに言ってまわりたかったの。
まだ小さな女の子でも、そんな気持ちだけは一人前に持ってるものだから。