絶対に好きじゃナイ!


そしてわたしは今、社長とふたりで電車に揺られている。

と言っても、行き先は夏祭りじゃなくて安達医院なんだけどね。



「だいぶ混んでんな。大丈夫か?」

「は、はい……!」


電車の中はぎゅうぎゅう詰め。

わたしの目の前には社長のネクタイがあるけど、なんとかその胸にくっついてしまわないように必死に踏ん張っていた。


「あっ!」


電車が大きく揺れて、思わず声がでる。

ぐしゃぐしゃと揉みくちゃにされて、少しだけ立ち位置がズレた。


あ、待って。
なんか、足の間に……


踏ん張って少し開かれた足の間に、何かが割り込んできたのがわかる。


す、スカートがめくれちゃう!

なに?鞄かな?
それとも誰かの足……?


「き、きゃあ!」


開いた足をなんとか閉じようとあたふたしていると、突然誰かの腕が腰に巻きつけられた。

そしてそのまま腰をぐんっと抱き寄せられて、目の前の社長の硬い胸に思いっきりダイブしてしまった。
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