絶対に好きじゃナイ!

そう考えると少し寂しい気持ちになると同時に、すごく不安になった。


社長がわたしをずっと可愛がってくれていたのは、ふたりの間に恋愛感情なんてあり得なかったからなんじゃないの?

それなのに、キスなんてしちゃったから。

わたしたちは、もう確実に、あの頃のふたりではなくなっちゃった。



もうキスもして飽きちゃったから、ただの地元の知り合いに戻りたいなんて言われたら?



そう想像しただけで、俯いた目に涙が浮かぶ。
涙が零れてしまわないように、顔を上げて必死に自分に言い聞かせた。


別に、それならそれでいいじゃん。
社長が突然キスしたりするから、困ってたんだし。
だいたい、社長のことなんて好きでもなんでもなかったんだし。


絶対、絶対に好きじゃナイんだからーー



その言葉を心の中で呟いたとき、どうしてか堪えきれずに涙が零れた。


「あー、もう。なんで……?」


わたし、全然泣き虫とかじゃないのに。
社長のこと考えてひとりで不安になって泣いてるなんて、これじゃあまるでーー
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