絶対に好きじゃナイ!

目の端に浮かんだ涙を拭ったとき、ふいにスピーカーを通して駅員さんの声が届いた。

少しざわつく待合室で、慌てて耳を澄ます。


『……お急ぎのお客様には大変ご迷惑をおかけしますが、只今40分程の遅れで運行しております。このままの遅れですと、当駅への到着は……』


え、うそ……
まって、遅れてる電車って……

繰り返されるアナウンスを何度もよく聞いてみたけど、何度聞いてもわたしの乗るはずの特急電車は40分遅れで運行しているらしい。


「え、ど、どうしよう!?」


もともと一本電車を遅らせちゃったから、この特急で行かなきゃ約束の時間に間に合わないのに!


だいぶ距離があるからタクシーやバスじゃ間に合わないし、soir本社の最寄駅へはこの電車がいちばん速い。

他の電車で乗り換えしながら行っても、約束の時間には遅れちゃう……


遅れの原因は何かの事故らしいから、ちゃんとした理由にはなるけど。
でも多忙なsoirの社長がせっかくつくってくれた時間なのに!

それって、理由があれば遅れても仕方ないってことにはならないと思う。
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