絶対に好きじゃナイ!

こういうときって、どうしたらいいの?


心臓がばくばくと嫌な音を立てる。
とにかく待合室を飛び出して、駅員さんに遅延状況を聞いたり、代わりになる電車がないか聞いたりした。

だけど、運悪くこの時間にはわたしの行きたい駅への電車がなくて。

遅れている特急を待つのがいちばん速いはずだと言われた。



「じ、事務所に、電話……!」


社長に電話して聞いてみよう。
何かいい方法があるかもしれないし、それがいちばんだと思った。

事務所に電話をかける手が、自分でもわかる程震えている。

さっきとは違う意味で溢れてくる涙を必死に堪えていた。



4回目のコールが途切れて、電話の向こうから落ち着いた声が聞こえてくる。


『お電話ありがとうございます。こちら……』

「し、紫枝さん!」

『あら、梨子ちゃん? どうしたの、そんなに慌てて』

「あの、で、電車が遅れて、それで……、えっと、バスもなくて……、だけどタクシーも……」
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