絶対に好きじゃナイ!
社長は無言でわたしの荷物を取り上げると、そのまま背を向けて歩き出した。
え、どこ行くの?
事務所、そっちじゃないけど……
だけど、わたしの肩には社長のスーツがかかってるし。
わたしの荷物は、社長が持ってるし。
これって、ついて来いってことだよね?
社長について行く。
そう思ったら、さっきまで地面に根をはったみたいに張り付いていた両足が、すんなりと前に出た。
白いシャツを着た背中。
あの頃の虎鉄の背中はもっと汚れていたのになあ。
大きくなって、きちんとした大人になって。
そしていつの間にか社長になってて、突然わたしの前に戻って来ちゃったんだもんなあ。
そんなことを考えていたら、前を向いて歩いたまま、社長が後ろに手を伸ばした。
手のひらを上に向けて、腰のあたりでひらひらと降る。
「ん」
そう言って、後ろにいるわたしに向かって軽く突き出した。