絶対に好きじゃナイ!
一瞬、心臓が止まったみたい。
そこに立っていたのは、腕を組んで目を鋭く尖らせた社長だった。
寄りかかっていたドアからゆっくりと身体を離すと、ずんずんこちらへ向かってくる。
「……梨子」
低く響いた社長の声。
まっすぐにわたしを射抜く鋭い瞳。
近づいてくる社長のあまりの迫力に、思わず要さんの背中に隠れるようにして彼が着ていたシャツの袖をきゅっと握ってしまった。
「ああ、梨子ちゃん。それはちょっとまずいよ……」
そろりそろりといなくなろうとしていた要さんが、情けない声で呟いた。
その言葉通り、社長が眉間の皺を更に深くするとわたしたちの前まで来て言った。
そりゃもう、ド迫力の声で。
「このド阿呆が! なんでそんな格好のままいなくなったんだバカ! 見つけたのが要だったからまだよかったが、それだって俺は我慢ならねえぞ!」
びくんと首をすくめる。
社長のこんな声、久しぶりに聞いた。
なんだかわけのわからない涙がジワジワと湧いてくる。