絶対に好きじゃナイ!
「まあまあ、虎鉄。ちゃんと送り届けたんだし、ご要望通り指一本触ってないから」
呑気な声でそう言った要さんを、社長がギロリと睨む。
これにはさすがの要さんもひぃーとかなんとか言ってたけど。
わたしはもう、それどころじゃない。
「しゃ、ちょ……」
涙目のわたしを見て、社長がつらそうに顔を歪めた。
なんだか痛そうな顔をする。
そしてわたしが着ていた要さんのジャケットを剥ぎ取ると、適当に丸めて要さんに投げつけた。
「ああ、ひどいな全く。ほんとに梨子ちゃんのこととなると他はどうでもよくなるんだから……」
ボヤく要さんを完全に無視したまま、社長が強くわたしの腕を掴んだ。
「い、痛いっ……!」
掴まれた腕をそのまま引っ張られて、引きずられるように歩く。
わたしの鞄を適当に探った社長が鍵を探し当ててドアを開けると、背中を押されて部屋の中に押し込められた。
「……悪かったな」
ドアを半分閉めて、社長がそう呟いた。