ショコラノアール~運命の恋~
楡さんの奥さんは、

学校の先生をしている。


学生時代に振られた相手らしいが、

腐れ縁で、

だんだんに大切な相手として意識するようになったとか。


楡さんの風貌は冴えない、

しかしその人柄が作り出す、

優しい空気感が、

奥さんのハートをつかんだのだろう。


ああ、あやかりたいあやかりたい。


サービスのチョコレートを口に含むと、

ふんわりと広がる独特の甘さの中に、




「楡さんこれ……もしかして手作り?」


「うん、アレ?言わなかったっけ?」


「なんかこれ、似てるんすよ、俺が探してる人のチョコに……」


「へえ?でも、チョコなんざ、こんなもんなんじゃないの?」


「そうですか?」

「これはあいつの妹が作ったんだよ」

「妹?」

「そうそう、俺の義妹(いもうと)

 パティシエ見習いなんだよ。


 だから頼んで作ってもらったんだよ。


 あ、市販のものじゃないぞ、

 ちゃんとここで作ったものだから

手作りだろ?」


そうか、手作りはみんなこんな感じなのか?


3年ぶりのその味覚にさらに感動する。


「楡さんもっとないの?」


「アホ、数量限定だ。」





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