ショコラノアール~運命の恋~

「あ」

机の上から色鉛筆の箱を取ると、

ベットに転がりスケッチを開いた。


短くなった茶色の色鉛筆に銀色のホルダーつける。


くるっと円を書いた。

パアッとひらめいた形を

無心に描く

指先が思い通りに動いていく。

次に会う時に彼に食べてもらいたい。

そんな気持ちがあふれて、

それが形になっていく。


私のケーキの原点は、ママのブラウニー。

顔すら鮮明に思い出せなくなってはいても、

あの時教えてもらった、ブラウニーのレシピだけは、

私の中に生きていて、

今の私の仕事へと誘ってくれた。


夏ってことにとらわれ過ぎて、私らしさのないケーキ作ってた。


夏でもないのに、日に焼けて、

決してイケメンじゃないけど、

妙にさわやかで、

そんな彼のイメージで考えた。


キュン……

やだ、胸が痛い。


まだ数回しか会ってないっていうのに、

こんなに会いたいと思っちゃうなんて、


もしかして、私……



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