ショコラノアール~運命の恋~

バスの乗客が思い思いの方向に行ってしまった後、

私たちは何故か無言でベンチに座り続けていた。


「あの、あのねっ」

まず言いやすいことから言わなきゃ。

「私、宮君にお礼言わなきゃなの」

「何?さっきのカラス?」


「ううん、違うの、

 あのね、ケーキ思いついたの」

あまりに唐突だったから、

宮君困ってるみたい。

そうだよね、意味不明だもの。

「あの、昨日言ってくれたでしょ?

 私らしいケーキって、

 それでね、思いついたの、

 私が今作りたいケーキってこれだって。

 今日宮君に会った後、

 レシピ作ってね。

なんか凄い私らしいのできた気がするの」


「へえ」

「明日、休憩時間に早速試作作ろうと思っててね……

アレ?宮君どうした?」


「朝の人、待ち合わせしてたって人、

 男だったよね」


「あ、陽君?うんそうだね」

「陽君て言うんだ?

 なんか仲よさそうだった。」


「え?あ、ああ、幼馴染みだから」


「幼馴染みだからって仲良すぎじゃない?」


何で、私がケーキの話してるのに、

陽君の話になるのか、意味が判らない。


「そうなの?」


「え?と、何がそうなの?」


「だからさ、ええと、その、彼氏なの?」


え?

あ、そう言えばあの時ちょっと心配だったんだ、

あんな別れ方したんだもの、誤解したってしょうがないのに、

レシピのことでいっぱいで、あの時思ったことなんてすっかり忘れてたよ。




「え?あの、違うよ。


 彼氏じゃないから、

 断じてないからっ



 っていうか、


 彼氏なんて私いたことないし」



ぶっちゃけました私、どさくさにまぎれてっ!
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