ショコラノアール~運命の恋~
「なお君、明日は?」

「もうゼミにときどき顔出すだけだから、
バイト目一杯入れてる。」

「宅配?」

「いや、引っ越し便」

「力仕事なんだね。
凄い、だからなんだ。」

「何?」

「働く男の人の手だなって思った」

「え、オヤジっぽい?」

「ヤダ、そんなこと言ってない」


真っ赤になって慌てて否定すると、

なお君は肩を揺らしてクククっと笑う。

からかわれたことに気づいて、

「もぉっ。」


と、叩く真似をしたら、

瞬きもしないで優しい目で私を見るから、

さっきまで友達のような軽いのりな会話してたのに

急に意識しちゃって、

あわてて視線をそらした。


こういう時どうしたらいいんだろう。

みんなどうしてるのかな。

暫く二人黙ったままで、

どうしようと思っていたら、

バスがやってきた。


「バス来たね」

「あ、うん。じゃあ、また」

「うん。今日はありがとう」

「こ、こっちこそ!」


プシューガガッ、


開いたドアからバスに乗り振り返ると、

淋しそうに私を見つめるなお君に何か言いたかったのに、

言葉が出ない。


ががっと音をさせて、

ドアが閉まる。


視界が半分遮られる中、

なお君の口がおやすみって動いた感じで、

私は思いっきり笑顔作って手を振った。



最終バスは私一人で、

動き出したバスの最後尾に座って窓を覗き込む。


なお君は

私に見えるように大きく手を振っていた












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