ショコラノアール~運命の恋~
黙って私の話を待っていてくれる。

チョコレートを削りながら、

なお君を思う。

失いたくないものを、手に入れると、
失いたくない気持ちが強くなって、
欲張りになる。

作っておいたクリームとクッキーとナッツ薄く伸ばしたクーベルチョコレート
重ねて、重ねて、仕上げていく。


「出来た」

「出来たか?」

「はい」

「時間かけ過ぎ」

店長はそういうと出来上がったケーキをつまみ上げるとパクりと食べた。

「明日もう少し、時間短縮できるようにしないとだめだな」


「はい!」

「但し、焼き菓子作ってからだぞ。」

「はい」

「今日はもう帰って休んでいいから。
ごめん、しのちゃん無理させたな」


「店長!私大丈夫なんです」

「もういいから、行ってやらないと。

さっきから何度も心配そうに覗いてるよ。

彼氏出来たみたいだね。

あれ持っていくだろ?」


私は、笑顔で頷いた

さっき仕上げたばかりのケーキ、

誰よりも食べて欲しい人に。





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