ショコラノアール~運命の恋~
「何言ってんだよ、詩信、

 こんな人の弱みにつけ込むオオカミなんかもう、帰せばいいだろ?」


ぐっ

オオカミとは人聞きの悪い。

「俺は別にっ」


「陽君煩い!それ置いて出て行ってっ!」


「っち。分かったよ。


 もう助けてやんないからな、

 後悔すんなよ詩信!」


ガシャンとテーブルに、お盆のまま載せると、

 後ろ足で襖をスパンと閉めて出て行った。


器用だな。


暫くぼうっとアイツの去った、襖を見ていたら、


しのちゃんが、


「気にしないでね。

 大体どこから立ち聞きしてたのかな、

 もう信じらんない」



「あの人、

 しのちゃんのこと心配なんだね」



「心配して貰うほど仲良くもないんだけど、

 あの、

 さっきのだけど。

 その、恥ずかしかっただけだから、

 驚いたのもあって、

 けど、嫌じゃないからね?」


あいつの持ってきたケーキと紅茶を俺の前に並べながら、

相変わらず視線を合わせてくれないしのちゃんに、

ちょっと、居心地の悪さを感じつつ、

自分の突飛な行動を反省していた。


「それに……

 泣きそうだったのに涙引っ込んじゃった」

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