ショコラノアール~運命の恋~
バイトが終わって、

タイムカードを押したとき7時だった。

「今いけば閉店前に間に合うかな」

階段をかけ下りたところで、足を止めた。

職場にあまり押し掛けるのも迷惑か、

連日、ケーキってのはなあ。

と、考え直し向かったのは、

彼女と会ういつものバス停。

きっとここに来るのだから、

待っていればいい。


ドキドキするな。


まるで初めて彼女と待ち合わせした時のような気分だ。


バス停まで来て、スマフォを見ようとポケットをあさった。

ああ、そうだったないんだった。

大して使ってないと言いながらも、時計機能には随分頼ってたんだな。

今何時なんだろ?

さっき7時過ぎてたから、

しのちゃんの仕事終わり前だとは思うんだろうけど、

会えるはずと思ったけど、

すれ違うってことも十分考えられるよな。

やっぱ、職場まで押し掛けるべきだったのかな、

スマフォ取りに行くっていう大義名分があるんだし、

けど、今戻ってすれ違うってことも、う~ん……

ゲームのTOMTOMでもして気を落ち着けるか?


再びポケットに手をやって、

ない存在を確認して、

ため息をつく。

「馬鹿かさっきから俺は」


殆ど存在感を主張してなかった俺の携帯。

でもしっかり依存してたんだな。

ドスンとベンチに腰を下ろすと、


ベンチのわきに置かれたごみ箱から、

バササッと大きな塊が飛び出した。


「うわっ」


それは飛び出してすぐ俺の横に舞い降り、

ぎゃあっ

と威嚇した。

「なんだ、お前か」

あの時のカラスだってことが判ったのは、

針金を外してやった時、

あの時暴れたせいなのかもっと前からなのかは、わからないけど、

左側の足の爪がおかしな方に曲がっていたのを覚えていた。


「お前あの時やられた傷まだ治ってないんだからな」


あの時一突きされた一撃傷は思いのほか深いらしく、かさぶたが、幾分小さくなったが、

まだ俺のおでこの真中に存在している。


「カアッ」


俺の話しかけて言葉に、

『わるかったな』とでも言うように一鳴きして飛び去った。
































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