ショコラノアール~運命の恋~
「まあ、お前のおかげで、
しのちゃんと付き合うと言う運びになったのだから、
まあ、このくらいの傷はどうってことは無いんだけどな。」
そう独り言を言って、
飛び去った空を見上げた。
群青色の夜空にやけに沢山の星がくっきりと見えた。
吐き出した息が白く広がり消える。
三月はもう春だけれど、まだまだ夜は冷え込む、
俺はダッフルコートの前をきゅっと合わせて、
一番上のボタンを掛けた。
しのちゃんが歩いてくるだろう方向を眺めて待った。
暫くして視界に入ったのは二つの影。
恋人なのだろうか、ちょっとじゃれながら、
うらやましいな。
俺もいつかしのちゃんと……
なんて妄想してにやけていたが、
一瞬で凍りついた。
ゆっくりとこっちに近づいてきたその人影は
妄想でもないその人自身で、
ただ、
となりにいるのが、俺では無かったから。
「なおくん……」
愛しい人から発せられた声に、
俺は感電したように動けなくなった。