ショコラノアール~運命の恋~
「違う」


「何がよ」


「いい方、悪かった。

 ……


 だからさ、

 俺お前が好きなんだよ。


 昔からずっとさ、


 だけど、かっこつけて言えなかった。


 それにあの頃お前がまさか俺を嫌いだなんて思ってもいなかった。


 お前は当然俺が好きなんだって思ってた

 なあ、判れよ。」


ズキン

胸が痛くて苦しくなる。


そうだよ。

大嫌いだった。

私のすべてを知っても逃げない、

私の拠り所だった。

その存在が嫌で、愛しくて、


大嫌いで大好きだった。




「正直、今のお前と昔のお前は違うけど、

俺の中の気持ちは変わってねえよ。


むしろ今のお前の方が好きだし」


けど。あの頃のことは悪かったよ。

俺が只ただガキだったよなあ、

好きな子にわざと意地悪い態度とるとか」


そんな風に反省されたら私の方が謝らなきゃじゃない。


「陽君、ごめん」



「え?」


「禿げさせて」

今思えば、私たちは別にケンカしていたわけでもなんでもなかった。

あの頃、何となく自分の感情の落ちつき場所が無くて、

あちこちささくれてた記憶が残ってしまっただけだったかもしれないな。


「おいっまだ禿げてないから」


ぷはっ

玄関のドアを開け、

逃げるように靴を脱いで、

玄関を上がる。


「笑うなよ~

お~い無視すんなって」


あははっ

って笑いながらキッチンになだれ込むと、


冷蔵庫の前で座り込む人影にぎょっとした。






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