ショコラノアール~運命の恋~
那珂井さんに御馳走になったから、
お腹はいっぱいだけど、なんだか飲まずにいられないって気分。
いっそ酔いつぶれたら楽じゃないかって
今まで意地で飲まずにいたけど、
もうそんなのどうでもいいって気持ちだ。
冷蔵庫からお父さんのビールを取り出すと、
それを咎めるように、
陽君が私の腕を制止する。
「え?お前飲んでいいのかよ」
「もうここまできたら問題なくない?明後日誕生日だし
陽君も飲むなら冷蔵庫にあるわよ」
「へえ……」
「何よ?」
「お前の初めて、俺とでいいわけ?」
「や、いやらしいいい方やめてよね
ビール一緒に飲むだけじゃない」
「まあ、そうだけどさ。
昔から、 大抵のことは俺がお前の初めてだしな」
「ちょっと何勝手なこと言ってるのよ」
「そうだと思うけど?
だって家族の次に俺って近い存在だったでしょ?
初めての友達、
初めて手をつないだ、
それに初めてのちゅうも」
「ちゅうって、
小さいころのなんてっ」
陽君はふふっと笑って、
「だよね。けど、俺もあれがファーストちゅうだから」
ファーストちゅうって……
ひゃああぁぁっ
血管が一気に開いたように身体がかっと熱くなった。
陽君が言ってるのは物心もろくにない時の話なのに、
あたしの脳内では今の陽君とキスする私の図が3Dカラー映像で、
展開されてしまった。
「ばっかぁっ変なこと言わないでよね!」
と振り払った瞬間パチンと掌に何かが当たる感触。
「いってぇ~、
なにすんだよ」
思いっきり陽君を平手打ちしてた。