ショコラノアール~運命の恋~
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-----遠くなっていくバスをぼんやり眺める。


なんだこれ?

何今の?


宙に残された右手を、

だらりと下げて、

深呼吸する。


状況が飲み込めないぞ。

さっきのは間違いなくしのちゃんで、

俺はそれをカップルだと思ってうらやましいなんて思って、

相手の男は俺に敵意むき出しだった。


あれ、あいつだよね?

しのちゃんちの居候。

迷惑そうで、毛嫌いしてなかったっけ?

なんでもないって言ってた人だよね。


でもあれだよな、どう見てもカップルでいちゃいちゃしてる感じで、

俺に見られたって気がついた時、驚いた顔してた。

「夢……だったのかな?

 今が?

 それとも、もっともっと前から?」


思わず吐露した言葉をあわてて吸い込んで、咀嚼した。

立ちすくむ俺の体中から今までそこにあったものが、

コソコソと逃げ出していくみたいに失われていく。


去ってすでにいなくなってしまったバスの残像をもう一度引き戻したくて、

凝視するけど、

そこにはただ夜が存在するだけ、

ただ一つ救われるのはバス停を照らす青白い外套が照らしていることだった。


「しのちゃん……」


俺の吐き出した言葉は誰に届くはずもなく 空しく響くだけだ。





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