ショコラノアール~運命の恋~
コツコツ、

ドアを菜にかで叩く音で振り返ると、

両手に酒瓶を手に、陽君が笑顔で立っていた。


「新生詩信さん、一緒にお酒飲みませんか?」


「新生って、なにいってんのよ。」


「俺、ここに来てから、

ずっとこの日待ってたんだぜ?


これでもさ……」


がんがんと、

ミニテーブルの上に瓶を乱暴において、

両手を広げる。


「なに?」


「何って傷つくなあ、

ここは、俺の胸に飛び込んで、

ハッピーエンドでしょ?」


「うわっ、キモッ!


ドラマの見すぎじゃないの?


暇人、少しは働きなさい」



「ホント可愛くなくなっちまったなお前。


昔は従順で可愛かったのにな」



「いつの話?

私はずっとこんな感じだから。


 それに未成年の頃のことなんて、

成人したらチャラよチャラ!」



「は?昨日まで未成年だったくせに」


「確かに」

お互いに顔を見合せて、

笑ってしまった。


「あのさ、俺、大学もどるわ」


「え、あっそうか、

陽くん大学生だったね?


大丈夫なの」



「サボりすぎて留年だなあ」


頭を掻きながら、苦笑。


「やだ、大変」


「正直大学とかどうでもいいかななんて思ってたんだけどさ、

やっぱ駄目だよな中途半端は。


色々……

逃げてたものに向き合おうと思う」



「そう」

 
「うん。

なんかお前ん家のことに関わったら、

俺の色々な悩みも大したことなかったな、なんて感じてさ。」


 

陽くんがママと連絡とってくれたからこそ、

すべてが重なって、

上手く流れたのだと思う。



「色々ありがとな。」


差しのべられた手が大きくて、

何だか胸がいたい。


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