ショコラノアール~運命の恋~
ゼロからなんて格好いいこと言っても、「逃げ道はちゃんと作っておきなさい」というお姉ちゃんの言葉に甘えた。
だって家族だもんいいよね♪
♪♪~♪
スマホがなり、
慌てて立ち上がる。
いつもの定時連絡。
「もしもし?陽君……」
「元気か?」
「元気か?って昨日も同じこと聞いたくせに」
「まあ、挨拶だろ?あいさつ!
今日、引っ越しだって聞いてたけど、
無事に済んだ?」
「うん、まだ片付け終わってないけどね」
「どこに、住むかなんて教えてくれんの?」
「え?ああ、別にいいけど?
那珂井さんちの2階、スタッフルームに借りてた部屋の隣」
「ああ、あそこ、って物置じゃん?」
「まさか、あのままの訳ないでしょ。
ちゃんと片付けてくれたから大丈夫なの。あれで、結構広いんだよ」
「そっか」
「うん、そう」
陽くんはあれから、大学戻った。
逃げていた色んな事にちゃんと向き合って
自分を見つめ直すと言って、
家から出て行った。
長い間いたようだったけど、
実際は一カ月ちょっとだったから、
日常に戻るのは容易だったに違いない。
『俺は諦めたわけじゃないよ』
そう言い残して出ていった陽君は
こうやってなんでもなくても定時になると電話をかけてくる。
ゼロからなんて言いながらゼロじゃない状況なのは否めないけど、
友達なのだからしょうがないよね?
私の中に、後ろめたさがあるのは、
あわよくばって、彼の気持ちが嬉しかったりするから。