ショコラノアール~運命の恋~
契約家庭をすべて回ったころになると、

もうすっかり暗くなっていた。


「もうあがっていいよ。ご苦労さん」


「はい失礼します」


葉月ちゃんは勉強してるのかな、

彼女の部屋を見上げると、

カーテンを開けてこっちを見てた。


「直くんっ、上がり?」


「うん」


「お疲れさまでした」


「勉強頑張って。またね葉月ちゃん」


「うんお休みなさい直君」


特定の女の子と視線を合わせて笑いあうなんて、

昔の俺では考えられなかった。


「俺も成長したよね」


小さく苦笑して、バイクにまたがる。


エンジンを掛けながら、

もう一度見上げると、彼女の姿は無かった。



アパートに向けて発進させたバイクのアクセルを踏み込む。


少しずつでもいいから、

しのちゃんのことを忘れるようにしなくちゃな。


そう思いながら再びあのケーキ屋の前を通る。


店はもう閉まっていて、

店の奥だけ電気がついていた。


まだいるのかもな。


あ、まただ、未練たらたら。








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