ショコラノアール~運命の恋~
「おめでとう。

良かったなこれで見習いは卒業だな。」


「え?」 

「コンクール入賞だ。今度の金曜に東京会場表彰式だ」


「誰がですか?」


「お前以外にだれがいる」


「だ、だって、あれはもう随分前に結果が出てて……ダメだったはずじゃ」

身に覚えがない。

コンクールの直前私の誕生日でガタガタしてて、

結局未消化のままコンクールに出て散々な結果だった。


「そうだったな。アレはな」


「アレ?って、私が出たのは一つだけだったのでは?」


「地方の若いパティシエを発掘するために、行われた、協会のコンクールだった。

 大会で賞に値しなくても、これはと思う作品は、

そのまま本戦まで持って言って検討されるんだが、

 詩信ちゃんのは本選の方で話題になって、

新作での参加を条件に候補作にノミネートされたんだよ」


「そうだったんですか、でも新作って?」


「ショコラノワール」


シェフは私のスケッチブックを開いて、

大会が終わってから試作を重ねていたケーキのレシピを示す。


「でも、それはまだシェフにも試食してもらってなくて……」


シェフはにっこりと笑うと、

いつの試作品を保管するケースの視線を送った。

「あっ……」

処分しなかったのになくなった事が何度かあった。



「いい作品だと思った。

気負ってなくて。

しっかり焼かれたブラウニーをベースを円形にくりぬいて、

そこに濃厚なクリームムース、

餡のようにリキュールにまぶされたベースのブラウニーはしっとりとして芳醇な味わい。

隠されていたブルーベリーソースの酸味もいいアクセントだった。

あしらわれた鳥の羽根はチョコベースのラングドシャーもいい。

勝手にレシピとプロフィール出しておいたんだよ」



「あの、ショコラノワールって……?」



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