ショコラノアール~運命の恋~
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新幹線から降りると、

一気に人の波に押し流された。

東京駅は時初めてじゃあなかったけど、

一人で来るのは初めてだった。


「ええと、ここが現在位置だから……


 駅の屋外マップを確認しつつ、メールに添付された地図を見比べて、

あ、あった、この道の角を曲がってすぐのビルだって、

目指すビルの看板を求めて行ったり来たりしながら協会の指定するビルを探す。


田舎に住んでる私たちにとってこの作業はホント馴れない。


たばこを吸って休憩をしている焼鳥屋さんの従業員ぽい人に、

地図を見せながら、

「こういうビルがこの辺にあるはずなんですが」

と尋ねると、


「ああ、そこ、いつも配達してるから分かるよ、

 今工事中のビルだからほらそこ。」


道理で見つからないはずだ、

を頼りにしていた看板が建設会社の幕でおおわれているんだから。

十分時間に余裕を持って駅に着いたのに、

会場に着いた時にはもうすでに、入賞者だろうか、5人がコックコートを着て椅子に座っていた。

「こちらへ」

会場係りの人が私の座る席を指差した。


「遅くなりました」

お辞儀をすると、


「まだ時間になってませんから大丈夫ですよ、

 ああ、だけど着替えがまだのようですね。

 あちらで着替えてきたらいいですよ」

と優しく言ってくれたけれど、

どうやら私は最後だったようだ。


「よろしくお願いします。」

着替えを済ませて指定された席に座ると。

となりの席の人がちらりと私を見上げてからめんどくさそうに頭を下げた。

なんだか出遅れた感で、私は身体を固くした。





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