ショコラノアール~運命の恋~
早瀬が去った後、

一人駅に向かって歩いた。

バスターミナルのベンチは屋根付きなのに、

さっきのゲリラ豪雨で座席はびしょびしょだった。


バスさっき出たばっかりだから、

10分以上待つことになりそうだ。


それこそ、TATUYA一緒に行けばよかったかも

まあ、いいか、

最近待つ時間も嫌じゃない。



前はもっとがつがつしてて、

バイトにコンパにサークルに、

時間があれば外食行って、

お気に入りの居酒屋行って…

『楡』行ってないなあ。

あそこはしのちゃんのお兄さんの店だし、

KONANも行ってない。

あそこは合コンの会場だったし、ケーキやから近いしな。


あのバス停を使わないといけない所を避けているから、

会いたくないわけじゃない。


でも彼女に気まずい思いをさせたくない、

たとえ振られても嫌いにはなられるのは辛すぎるから。



時間がたてば彼女への気持ちを忘れられるのかと思っていたけど、

それどころか一層強く詩信ちゃんへの思いを募らせている。


情けない……


葉月ちゃんは

『男の純情って直らないものね』

って笑う。


葉月ちゃん。


彼女がいてくれるおかげで

、俺は一人抱え込まないでいられた。


あんな素敵な人が俺の友人でいてくれるのは奇蹟だと思う。


たぶん、早瀬が言うように、

彼女が俺に好意を持ってくれてることは感じていないわけじゃない。


けれど、友人としての位置でいられることが今の俺たちにはいいと思う。


彼女がそれを口に出さないのは俺がそう思っているのを知っているのと、

たとえつきあっても、続かないであろうことが判っているからだ。


それに、彼女は司法試験でそれどころじゃないのだから。


俺も正直まだ就活をはじめたばかり

みんながに内定を取る中、

自分で何がしたいかいまだ明確でない俺は、

その一歩が踏み出せないでいた。

バイトも最低限にしているのにもかかわらずだ。

















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