ショコラノアール~運命の恋~

そうなんだ、

人の気持ちを考えるのは悪いことじゃない。

誰かの言葉に戸惑うのも悪いことじゃない。


要は私がそのことで自分でちゃんと納得して考えて決めて動けるなら、

それが同じ結果になったっていい。このまま進もう。


肝心なことは私が私を認めてあげるってことなんじゃないかな。


気がつくと

さっきまで足元ではじけた雨の音と身体を打つと思っていた雨は少しも感じられなくなっていた。


「あれ?」

ぱあっと指してきた光に一瞬目がくらんだ。


「うそ」


『晴れたね。

ホントひどいゲリラ豪雨だったね』


『午後はこのまま晴れるらしいよ』


さっき私と同じように空を見上げた人の声が後ろから耳に入った。


ふっ


「なんだかな」


まだ濡れる道路を走るのをやめゆっくりと歩き出した。

急ぐことはない。


もう何も逃げる必要は無いのだから。


少しだけ濡れた方の湿り気が何かから抜け出した勲章のように思えて、

嬉しくなった。


そしてむしょうに誰かと話したいなって思えた。



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