ショコラノアール~運命の恋~


「なお君、あのね私ね…」


「次は玉原公園前、玉原公園前」


「あ、降りなきゃ」

あわててブザーを鳴らし立ちあがった。





「しのちゃん!」


「え?」


「荷物、忘れないで」


「あ、そう、そうねっ」


わたわたと荷物をつかんで運転席の方へ歩き出した。


「しのちゃん!」

振り返ると、なお君はちょっと困った顔して、


「話できてよかった。

 元気でね」



「うん。なお君も」


笑えてるかな私。

チクチク



荷物の持つ手が震える。


チクチク


どっちの足から動けばいいか分かんない


チクチク


やっとの思いでステップを下りると、

イライラしたように

一気にドアが閉まって



あ、


あわててよけると一緒くらいに

バスはクラクションをブッっと鳴らして発車する。


チクチクするよ。

心臓が痛いよ。

苦しいよ。


いいたいことあるのに、

話したいこといっぱいあるのに、

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